電気機器内の電気回路はシリコン半導体による集積回路化が進んでいます。それにより電気機器の低価格化、サイズ減少、情報処理の複雑化、高速化が可能になりました。集積回路の恩恵が顕著なのはパソコンで、過去10年間ほどのその高速化と普及を考えるとわかると思います。その集積回路は大きく二つの種類に分けられます。アナログ回路とデジタル回路です。アナログというのは変化が時空間的に連続するものを指し、デジタルというのは変化が離散的であるもののことです。基本的にはデジタル回路というのは0と1の二値信号を処理します。デジタル回路の特徴は複雑な信号処理が可能なことです。
デジタル回路の代表、パソコンのCPU
しかし、自然界に存在する音や映像などの信号はアナログ信号です。我々が直感的に認識できるものもアナログ信号ということになります。なので、デジタル回路による信号処理の前後には必ず我々が検知できるアナログ信号にするためにアナログ回路が必要ということになります。また、高速または大電力の信号を扱う場合もアナログ回路が必要になります。アナログ回路の具体例としてはアナログ−デジタル(デジタル−アナログ)変換機、増幅回路、電源回路などです。
計算機によるシミュレーション
本研究室ではデジタル回路より設計が困難なアナログ集積回路を設計、試作をしています。計算機上において市販の回路シミュレーターソフトウェアにより回路設計をし、シミュレーション上での動作確認をしたのち、東京大学大規模集積システム設計教育研究センター(VDEC)を通して半導体メーカーに試作をお願いしています。そして試作された回路の実際の動作確認を行っています。これまでに人間の聴覚機能を模倣したパルスニューロンモデルを用いた音源定位用集積回路、デルタ−シグマ変調を用いたアナログ−デジタル変換集積回路などを設計、試作してきました。
作製した集積回路チップ
最近ではニューラルネットワークによる適応フィルタを作製し、騒音を音で消去するアクティブノイズコントロール技術と呼ばれるものも研究しています。本研究室オリジナルのアナログ回路で騒音除去が可能なことを実験的に実証しています。しかしながら、実用的には騒音除去効果が不十分なことから、より性能を上げる努力をしています。いずれにせよ、我々はこれからもアナログ集積回路でしか実現困難な機能を有し、低消費電力で環境にも適応した集積回路を設計、開発していきます。
アクティブノイズコントロールの概念図

研究テーマ一覧へ